レストア&リマスターについて RESTORATION & REMASTERING

監督コメントDIRECTOR’S COMMENT

『竜二』の呪い。43年間もこんなに振り回されることに腹が立ちます。リマスターというものにはずっと懐疑的な気持ちでした。もっと前よりも良くしようという小賢しくていじましい欲望が湧いてくるんです。今回は最後のリマスターになると思うからやりませんかと言われた時に「やだよ、好きにしてくれよ」という感じがあったんだけれど、「これで20年くらいいくことになりますよ」と脅かされたので最後の奉公です。当時のカメラマンの川越道彦くんにも相談したんですけども、彼が望むことはたった一つだ、と。“あの当時のまんまにしてください”と。私もそれは大賛成しまして、今回のリマスターのテーマは「何も足さない、何も引かない」ということです。当時のドキドキ、衝撃、荒っぽさ、稚拙さ…そういうものが全部残ったものに仕上げるということ。自分たちが作ってしまった“奇跡”みたいなものを“そのまま”伝えたかった。松田優作は声を震わせて褒めてくれたね。

『映画と言えば35(サンゴー)だろ』と無謀にも35mmフィルムで撮影した事が長い時代を経てもこんな形で残す事が出来たのも感慨深い。今だったらiPhoneなんかで撮影したんだろうか?へたっぴな部分はいっぱいあるけれど、時々ハッとするような良いカットがあった。自分でいうのもなんだけど。

川島透(監督) 川島透 監督のサイン
公園でしゃがんで遊ぶ妻と娘を、白いスーツにサングラスの竜二が少し離れて見守る(モノクロの場面写真)

レストア&リマスターRESTORATION & REMASTERING

熱を、そのままに ――『竜二』リマスターについて

荒削りだからこそ生まれた奇跡のような映画を、変えずに残してほしい。本作の撮影監督・川越道彦氏から川島透監督へと受け継がれたその想いとともに、今回のリマスターは我々に託された。いまの技術を使えば、映像を滑らかにし、いわゆる「きれいで見やすい映像」に仕上げることも可能である。しかし『竜二』を改めてスクリーンに蘇らせるにあたり、求められたのはそうした「きれいな」仕上がりではない。我々の役割は、その想いを技術の面から形にしていくことだった。

作業は、35mmオリジナル・ネガフィルムの4Kスキャンから始まる。オリジナル・ネガには、上映用プリント以上に、撮影時の光が高い解像感と豊かな色の階調のまま刻まれている。そのネガを4Kで取り込み、フィルムの持つ情報を余すことなく引き出したうえで、2Kへと仕上げる。ネガを起点に一から作り直すからこそ、既存のマスターとは一線を画す精細さと階調を画面に呼び戻すことができる。また、フィルムスキャナーは機材ごとに画の質感が少なからず異なるため、今回は、よりフィルムらしさを素直に残せる機材として、Lasergraphics社のScanStationを採用し、修復へと続く工程を組み立てた。

ネガの保存状態は概ね良好だったものの、やはり40年以上の歳月による劣化は避けられない。ゴミやキズ、画面の揺れといった症状を、画の生々しさまで削ってしまわないよう取り除き、公開当時の姿へと戻していった。その過程で、ごくわずかなコマ飛びも見つかっている。1秒にも満たないが、川島監督の指示のもと、少しでも視聴を妨げる要素はなくしたいと該当部分を削除した。

リマスターにおいて重要な作業であるグレーディング(色を整える工程)にあたっては、まず何を拠り所とすべきかを見定めるため、現存する上映用プリントや、これまでに発売されたDVD・Blu-rayなどを比較した。それらの制作年代や制作経緯を調べつつ、本来目指されていた『竜二』の色の方向性を探っていく。判断の軸となったのは、当時監督として現場に立った川島透監督の率直な意見である。さらに、『竜二』の3年前に公開された『狂い咲きサンダーロード』で撮影デビューを果たし、同時代の空気を知る撮影監督・笠松則通氏がグレーディング監修として加わり、当時の雰囲気の再現をより確かなものとした。調整は劇場に限りなく近い環境のスクリーンで行い、色彩の階調や黒の締まりから、グレイン(フィルムの粒子)の立ち方まで、上映を前提に整えている。

なかでも最後まで慎重に扱ったのが、グレインである。ともすれば、現代の映像では敬遠されることもあるが、本作においては特別な意味を持つ。35mmフィルムならではのこの質感は、『竜二』という作品の成り立ちそのものを物語っている。その手触りを失うことのないよう、調整を重ねた。

音声についても、上映用プリントと聴き比べながら、モノラルならではの力強さを損なわないよう仕上げている。

この画面から、あの時代の荒々しい息づかいを感じ、奇跡の映画を受け取っていただけたなら、修復に携わった者としてこれ以上の喜びはない。

水戸遼平:IMAGICAエンタテインメントメディアサービス アーカイブ・コーディネーター

4Kスキャン2Kリマスター スタッフ RESTORATION TEAM

リマスター監督
川島透
グレーディング監修
笠松則通
カラリスト
倉森武
デジタルレストア
堤琴音
アーカイブ・コーディネーター
水戸遼平
修復ラボ
IMAGICAエンタテインメントメディアサービス
グラフィックデザイン
冨永浩一
Webデザイン
田村重穂
安部知樹
予告編
梅村和史
宣伝
長村亜紀
協力
辻井孝夫
プロデューサー
日下部圭子
製作
マコトヤ

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